徒然草 ====== 第27段 御国譲りの節会行はれて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 御国譲りの節会行はれて、剣璽、内侍所渡し奉らるるほどこそ、かぎりなう心細けれ。 新院((花園天皇))のおりさせ給ひての春、詠ませ給ひけるとかや   殿守(とのもり)のとものみやつこよそにしてはらはぬ庭に花ぞ散りしく 今の世の、ことしげきにまぎれて、院には参る人もなきぞ、さびしげなる。かかる折に ぞ、人のこころもあらはれぬべき。 ===== 翻刻 ===== 御国ゆづりの節会おこなはれて。釼。 璽。内侍所わたし奉らるるほどこそ。 限なう心ぼそけれ。新院のおりさせ給 ての春よませ給けるとかや 殿もりのとものみやつこよそにして はらはぬ庭に花ぞちりしく今の世のこと しげきにまぎれて。院にはまいる人 もなきぞさびしげなるかかる折に ぞ人のこころもあらはれぬべき/w1-23l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0023.jpg