徒然草 ====== 第15段 いづくにもあれしばし旅立ちたるこそ目覚むる心地すれ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ、目覚むる心地すれ。 そのわたり、ここかしこ見歩(あり)き。田舎びたる所、山里などは、いと目慣れぬことのみぞ多かる。都へ便り求めて文やる。「そのこと、かのこと、便宜に、忘るな」などいひやるこそをかしけれ。 さやうの所にてこそ、よろづに心づかひせらるれ。持てる調度まで、よきはよく、能ある人、形よき人も、常(つね)よりはをかしとこそ見ゆれ。 寺・社などに、忍びてこもりたるもをかし。 ===== 翻刻 ===== いづくにもあれ。しばし旅だちたるこそ めさむる心ちすれ。そのわたり。ここかしこ 見ありき。ゐなかびたる所。山里などはいと めなれぬ事のみぞおおかる。都へたより もとめて文やる。その事かの事便宜/w1-13l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0013.jpg にわするななどいひやるこそおかしけれ。 さやうの所にてこそ。萬に心づかひせら るれ。もてる調度までよきはよく。 能ある人かたちよき人も。常よりは おかしとこそ見ゆれ。寺社などにしのび てこもりたるもをかし/w1-14r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0014.jpg