徒然草 ====== 第8段 世の人の心まどはすこと色欲にはしかず・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 世の人の心まどはすこと、色欲にはしかず。 人の心はおろかなるものかな。匂ひなどは仮のものなるに、「しばらく衣裳に薫き物す」と知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心どきめきするものなり。久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て、通を失ひけんは((久米仙人。[[:text:k_konjaku:k_konjaku11-24|『今昔物語集』11-24]]・[[:text:hosshinju:h_hosshinju4-05|『発心集』4-5]]参照。))、まことに、手・足・肌(はだへ)などの清らに、肥えあぶらづきたらんは、ほかの色ならねば、さもあらんかし。 ===== 翻刻 ===== 世の人の心まどはす事色欲にはしかず。 人の心はおろかなる物かな。にほひなどは かりのものなるにしばらく衣裳に 薫物すとしりなから。えならぬにほひ には必こころどきめきする物也。久米の 仙人の物あらふ女のはぎの白きを見て。通を うしなひけんは。誠に手あしはだ へなどのきよらに。肥あぶらづきたらんは。/w1-7l http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0007.jpg 外の色ならねばさもあらんかし/w1-8r http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0008.jpg