とはずがたり ====== 巻4 18 熱田の宮に参りぬ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[towazu4-17|<>]] 熱田の宮((熱田神宮))に参りぬ。 通夜したるほどに、修行者どもの侍る、「大神宮((伊勢神宮))より」と申す。「近く侍るか」と言へば、「津島の渡りといふ渡りをして参る」よし申せば、いと嬉しくて、参らんと思ふほどに、宿願にて侍れば、「まづこの社(やしろ)にて、華厳経の残り今三十巻を書き果て参らせん」と思ひて、何となく鎌倉にてちと人の賜びたりし旅衣(たびごろも)など、みな取り集めて、またこれにて経を始むべき心地せしほどに、熱田の大宮司とかやいふ者、わづらはしくとかく申すことどもありて、かなふまじかりしほどに、とかくためらひしほどに、例の大事に病(やまひ)おこり、わびしくて、何の勤めもかなひがたければ、都へ帰り上りぬ。 [[towazu4-17|<>]] ===== 翻刻 ===== あつたの宮にまいりぬつやしたるほとにしゆ行しやともの侍る 大神宮よりと申ちかく侍かといへはつしまのわたりといふわたり をしてまいるよし申せはいとうれしくてまいらんとおもふほとに しゆくくわんにて侍はまつこのやしろにてけこんきやうののこり いま三十くわんをかきはてまいらせんと思てなにとなくかまくら にてちと人のたひたりしたひころもなとみなとりあつめて 又これにてきやうをはしむへき心ちせしほとにあつたの大宮司 とかやいふ物わつらはしくとかく申ことともありてかなふましかりし ほとにとかくためらいしほとにれいの大事にやまひをこり わひしくてなにのつとめもかなひかたけれは都へ返のほりぬ/s184r k4-36 http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/184 [[towazu4-17|<>]]