[[index.html|醒睡笑]] 巻8 祝ひすました ====== 10 もの祝ひする商人ありて初春の朝ごと昆布搗ち栗など・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho8-162|<>]] もの祝ひする商人ありて、初春の朝ごと、昆布(こぶ)・搗(か)ち栗など、菓子を入れてすわる染付けの鉢あり。宵より妻の取り出だし、下主(げす)に渡し、「きれいに濯(すす)ぎて開けよ」と言ふに、何とかしけむ、取り落してうち割りぬ。女房、肝をつぶしあへり。 明けぬれば、「いつもの茶の子出づるや」と亭主待てども、さらに出でず。そのまま気色(きしよく)をそこなひ、女房を叱る時に、下主、件(くだん)の割れたる鉢を持ち出で、ありのままに言ひてけり。 亭主、案にかはり、機嫌((「機嫌」は底本「さけん」。諸本により訂正。))を直し、「珍々重々(ちんちんちようちよう)なるかな。今年、わが商ひは、はちわり((鉢割り・八割))あらうずよ」と祝うたり。 [[n_sesuisho8-162|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 物いはひする商人ありてはつ春の朝毎/n8-65r   こふかちぐりなどくはしをいれてすはる   そめつけのはちあり宵よりつまのとりい   たし下主に渡しきれいにすすきてあけよと   いふになにとかしけむとりおとしてうちは   りぬねうはうきもをつふしあへりあけぬ   れはいつものちやのこいつるやと亭主まて   ともさらにいてすそのまま気しよくをそこ   なひねうばうをしかるときにけすくたんの   われたる鉢をもちいてありのままにいひて/n8-65l   けりていしゆあんにかはりさけんをなをし   珎々重々なるかなことし我あきなひは鉢わり   あらふすよといわふたり/n8-66r