[[index.html|醒睡笑]] 巻7 舞
====== 1 人あまた朝食に寄り合ひぬ中に一人夕の大酒にいまだ頭が思いと語る・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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人あまた朝食に寄り合ひぬ。中に一人、「夕の大酒にいまだ頭(かしら)が思い」と語る。「盃は何にてかありつらん。だる盃ではなかりつるか」と尋ぬる。「奇特や。さやうの名をも始めて聞いた。五度入(ごどいり)・七度入(しちどいり)・湯盃(とうさん((読み仮名は底本による。)))・可盃(べくさかづき)・芙蓉盃(ふようはい)・金盃・銀盃・鸚鵡盃(あうむはい)・薬玉船(やくぎよくせん)・七宝のやれ・びいどろの盃((「盃」は底本「さるべき」。諸本により訂正))・猪口(ちよく)などといふこそあれ」と言へば、「判官殿最後に、高館(たかたち)にて酒盛りのありし時出でたる盃にてあるもを、え知らぬよな」と言ふ。そちほど物知りはあるまい。吾妻鏡のやうなる書にあるかや」。「いや高館(たかだち)((舞の本「高館」))に、『亀井が飲うだる盃を、武蔵殿へ思ひざし』、これよ」と。
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===== 翻刻 =====
一 人あまた朝食によりあひぬ中にひとり夕の
大酒にいまた頭(かしら)かをもひとかたる盃はなににてか
ありつらんたる盃ではなかりつるかとたつぬる
奇特(きどく)やさやうの名をも始(はしめ)てきひた五度(と)入
七度(と)入湯盃(とうさん)可盃(へくさかづき)芙蓉盃(ふようはい)金杯(きんはい)銀盃(ぎんはい)
鸚鵡盃(あふむはい)薬玉船(やくきよくせん)七宝(ほう)のやれびいとろのさるべき
ちよくなどといふこそあれどいへは判官(はうぐはん)殿最(さい)
後(ご)に高館(たち)にて酒もりのありしときいで/n7-52l
たる盃にてある物をえしらぬよなといふ
そちほと物しりはあるまい吾妻鏡(あづまかかみ)のやうな
る書にあるかやいや高館に亀井(かめい)がの
うだる盃(さかづき)を武蔵殿(むさしどの)へおもひざしこれよと/n7-53r