[[index.html|醒睡笑]] 巻7 謡 ====== 10 熊野侍は盃を差す段には必ず謡ひて差すが法なり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-067|<>]] 熊野侍は、盃を差す段には、必ず謡ひて差すが法なり。祝言の時、ある人、通盛((謡曲「通盛」))の、「憂きながら心の少しなぐさむは、げに海辺(かいへん)のわざ((「通盛」現行本に「げに海辺(かいへん)のわざ」なし。))」と謡ひたれば、差さるる者、そのまま脇差(わきざし)をねぢまはし、「親ぢや人のあなたにて聞かるるに、海辺(かいへん)のことを謡うたるは、われを馬鹿にしたり。聞くまい」とて狂ひしかば、座敷の興さめぬ。 [[n_sesuisho7-067|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 熊野侍は盃をさす段には必謡てさすか法   なり祝言の時ある人通盛のうきなから   心のすこしなくさむはげに海辺(かいへん)のわざと   うたひたれはささるる者そのまま脇指を   ねぢまはし親しや人のあなたにて聞るる/n7-37l   に海辺(かいへん)の事をうたふたるは我れを馬鹿(ばか)   にしたりきくまいとてくるひしかばざしき   の興さめぬ/n7-38r