[[index.html|醒睡笑]] 巻7 廃忘 ====== 5 亭主の留守となれば常に通ひなれたる者あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho7-047|<>]] 亭主の留守となれば、常に通ひなれたる者あり。かねての約束は、屋根から忍び来たれ。橋を懸け置かん。亭主帰りたらば『屋根を歩(あり)くは猫であらう』といふ時、猫の鳴く真似をせよ」としめしあはせておきつるが、まことの折、男聞きつけ、「屋根を歩くは人のやうな」。女房、「いや、このほど大きなる猫が歩く」と言ふに、かの方肝を消し、「にやう」と言ふべきをうち忘れ、細声になり、「ねこう」と申すなり。 [[n_sesuisho7-047|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 亭主(ていしゆ)の留守(す)となれはつねにかよひなれた   る者あり兼(かねて)の約束はやねからしのひ来   れ橋をかけをかん亭主帰りたらばやねをあ   りくは猫(ねこ)てあらふといふ時猫(ねこ)の鳴まねを   せよとしめしあはせてをきつるがまことの折/n7-29l   男聞つけやねをありくは人のやうな女房   いや此ほと大なる猫がありくといふに彼方   肝をけしにやうといふへきをうちわすれ   ほそ声になりねかうと申なり/n7-30r