[[index.html|醒睡笑]] 巻7 似合うたのぞみ
====== 1 かりそめのことにもものごと作勢ある人のわづらひに医者を請じ脈を取らせ・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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かりそめのことにも、ものごと作勢(さくせい)ある人のわづらひに、医者を請じ脈を取らせ、「病はなにと申す証(しやう)にて候ふや」。「ただ内損(ないそん)と見えたる」よし、返答せられければ、かの病者、「さてさて、口惜しの次第や。外分を失なうたり」と繰り言のやうに言ひけるを、傍らより、「生を受けたる身に、上一人下万民(かみいちにんしもばんみん)、誰とて逃がるあらん。聞こえざる恨みやうや」と教訓しける時、「いや、病を逃れんとにはあらず。せめてわづらひになり、と癬(ぜにがさ)((銭嵩に通じる。))か腹病(ふくびやう)((福に通じる。))をも病いで、内損は何ぞや」。
世の中は徳して人に讃められて損して人に笑はれぞする
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===== 翻刻 =====
似合たのぞみ
一 かりそめの事にも物ごと作勢ある人の煩
に医者(いしや)を請(ひやう)じ脈(みやく)をとらせ病はなにと申
証にて候や唯内損(ないそん)と見えたる由返答せら
れけれは彼病者(ひやうしや)さてさてくちおしの次第や
外分(くわいふん)をうしなふたりとくりことのやうに
いひけるを傍(かたはら)より生をうけたる身に上(かみ)一人下(しも)
万民誰とてのかるるあらんきこえさるうらみ
やうやと教訓(きやうくん)しける時いや病をのかれん/n7-19l
とにはあらずせめてわづらひになりと癬(ぜにがさ)
か腹病(ふくびやう)をもやまひて内損はなんぞや
世中は徳して人にほめられて
損して人にわらはれぞする/n7-20r