[[index.html|醒睡笑]] 巻6 恋のみち ====== 1 妻夫いさかふことあり ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-059|<>]] 妻夫(めをと)いさかふことあり。女房、心猛く夫(おつと)を打たんと杖を上げけるに、驚きつつ前栽(せんざい)に飛び降り逃げ、山椒の木のもとに隠れぬるを、妻、縁の上より言ふ。「いかほど逃ぐるところも、かがむ所もあらうずに、あのかんばうだふれが、山椒の木の根にかがみごとは」と叱られ、男、ふるふふるふ、「いや、山椒の木ばかりではおりない。山の芋の蔓(つる)の候ふに、取り付いてゐ参らする」と申せしことのあはれさよ。 山芋、腎にもくるしからず。本草をよく見給へ。((底本、この行小書き。)) [[n_sesuisho6-059|<>]] ===== 翻刻 =====    恋のみち 一 妻夫いさかふ事あり女房心たけくおつとを   うたんと杖をあけけるにおとろきつつ前栽に   とひをりにげ山椒の木のもとにかくれぬるを妻   ゑんの上よりいふいかほと逃処もかかむ所もあ   らふすにあのかんばうたをれが山椒の木の根に   かかみ事はとしかられ男ふるふふるふいや山椒の   木斗ではおりない山のいものつるの候にと   りついてゐ参らすると申せし事のあはれさ/n6-30l   よ 山芋腎にもくるしからす本草をよく見給へ/n6-31r