[[index.html|醒睡笑]] 巻6 若道知らず ====== 5 子を置きたればそれに頼り親再々寺に行く・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho6-056|<>]] 子を置きたれば、それに頼り、親再々(さいさい)寺に行く。僧衆(そうしゆ)寄り合ひては、「それがにやけ、これがにやけ」と語るを聞いて、息子に、「何とやうなる物を『にやけ((若気(にやくけ)。若衆のこと。))』とは言ふ」と問ふ。「『にやけ』とは、酒をいふ」と。宿に帰り、妻に向ひ、「とかく子たらんをば、人中に置かいでは、ものを知らぬぞよ。酒を『にやけ』といふことを教へたは」と語る。 今度息子里に下り、長々ゐければ、寺より中間(ちうげん)迎へに来たる。かの家、幸ひ酒屋なり。母の見て、「やれ、あの使に、まづにやけの実((酒の実。酒粕。))をなりと食はせよ」と。 [[n_sesuisho6-056|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 子を置たれはそれにたより親さいさい寺に/n6-28r   行僧衆よりあひてはそれかにやけこれかに   やけとかたるをきいてむすこになにとやうな   る物をにやけとはいふととふにやけとは酒をいふ   と宿に帰り妻にむかひとかく子たらんをは人中   にをかゐでは物をしらぬそよ酒をにやけといふ   事ををしへたはとかたる今度むすこ里にく   たり長々ゐけれは寺より中間迎に来るかの   家幸酒屋なり母の見てやれあの使にまつ   にやけのみをなりとくはせよと/n6-28l