[[index.html|醒睡笑]] 巻5 婲心 ====== 3 昔語りに女院へある時大きなる杓子をあげけることありし・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho5-002|<>]] 昔語りに、女院へある時、大きなる杓子をあげけることありし。御覧じ始めなれば、何とも御知りなくて、左右へ御尋ねあれども、同じく「存ぜず」と申さるる。「さらば、下衆(げす)に問へ」と仰せある時、お半下(はした)に、右のむねを尋ねらる。聞く者をかしがりて、「名を存じたる者なし」と申せば、女院の仰せあるやう、われはこれを推(すゐ)した。鬼の耳かきであらうず」と。 時頼禅門((北条時頼))   思ふべし人はすりこぎ身は杓子思ひあはぬはわれゆがむなり [[n_sesuisho5-002|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 昔語に女院へある時おほきなる杓子(しやくし)をあげける   事ありし御覧し始なればなにとも御しりなく/n5-4r   て左右へ御尋あれどもおなじく存せずと申   さるるさらばげすにとへとおほせある時おはし   たに右のむねを尋らる聞者(もの)おかしがりて   名(な)を存たる者なしと申せば女院の仰せ   あるやうわれはこれをすいしたおにのみみ   かきであらふずと      時頼禅門    思へし人はすりこぎ身はしやくし     おもひあはぬは我ゆがむなり/n5-4l