[[index.html|醒睡笑]] 巻4 いやな批判 ====== 7 山中に祝言のことあり蛸を買ひにつかはす・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho4-033|<>]] 山中に祝言(しうげん)のことあり。蛸(たこ)を買ひにつかはす。使(つかひ)、その形を問ふに、功者(こうしや)めきたる男、「蔓(つる)にいぼあり。烏賊(いか)に似たる物、悪(わる)うすれば見違ゆる」と教へけり。 堺の津に出でて、大道を尋ぬるになし。「ある横町に教へのごとくなる物あり」とて、ほんだはらをぞ買ひける。 山に帰り、かの功者に見せければ、「これは蛸ではない、烏賊ぢや」。「いや、蛸にすうだ」。「さらば、殿に御目にかけ、理をすませ」とて、見せ参らせたれば、「蛸でも烏賊でもなし。干鮭(からざけ)といふものなり。 [[n_sesuisho4-033|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 山中に祝言の事ありたこを買(かひ)につかはす   使其かたちをとふに功者(こうしや)めきたる男つるに/n4-30r   いぼありいかに似たる物わるふすれば見ちかゆると   をしへけり境(さかい)の津に出て大道をたづぬるに   なしあるよこ町にをしへのことくなる物   ありとてほんだはらをそかひける山に帰り   彼功者に見せけれはこれは蛸(たこ)ではないいか   ぢやいやたこにすふたさらは殿に御目にかけ   理をすませとて見せ参らせたれは蛸でもいか   てもなしからざけといふ物也/n4-30l