[[index.html|醒睡笑]] 巻4 聞こえた批判 ====== 10 京にて猫を失なへる者あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho4-009|<>]] 京にて、猫を失なへる者あり。厨子小路(づしせうぢ)にいたり、身をやつし尋ねしが、ある所にて不思議に見付け、「これはわが猫」と言ふ。亭主出でて、「そちがといふ証拠は」。また、「なんぢがといふ証拠は」。惜しく欲しくの争ひなれば、是非つひに分かたず。 板倉伊賀守((板倉勝重))、是非の相手二人対座せさせ、件(くだん)の猫を座敷の中に置き、「もとの主も、今の主も、手に鰹(かつお)を一節づつ持ちて呼べ。生まれてより育て慣れたる方へこそ行くべけれ」と。 案のごとく、はじめ失なひし者の膝の上へ、鳴く鳴く行きしことよ。 [[n_sesuisho4-009|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 京にて猫をうしなへる者あり厨子(づし)小路に   いたり身をやつし尋しがある所にて不思   儀に見付これは我猫といふ亭主出てそ   ちがといふ証拠(せうこ)は又汝かといふ証拠はをしく   ほしくのあらそひなれは是非(ぜひ)終(つゐ)にわかたす   板倉伊賀守是非のあひて二人対座せさ   せ件の猫を座敷の中にをきもとの主も   今の主も手に鰹(かつほ)を一ふしつつもちて/n4-13l   よべむまれてよりそたてなれたる方へこそ行   へけれとあんのごとく始うしなひし者の   膝(ひざ)の上へなくなく行し事よ/n4-14r