[[index.html|醒睡笑]] 巻3 自堕落
====== 2 世度卑なる出家あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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世度卑(せとひ)なる出家あり。一人の弟子に言ふ、「明日は吉野の花見に行かん。先途ほど遠し。暁より起きて出立を用意せよ」。「心得たり」とつとに起き、酒飯ととのへ、戸を叩きければ、坊主、「いまだ夜ぶかなり」とて起きず。
さるほどに、つねづね弟子に隠し、寝(い)ねざまには焼味噌((底本「焼味僧」))と号して、鶏の玉子をととのへ、肴に用ゐて酒を飲むことを、心に無心に思ひゐけるが、その時こらへかね、「夜が深いか浅いかは知らぬ。焼味噌が父(てて)はもはや三番鳴いた」。
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===== 翻刻 =====
一 世度卑(せとひ)なる出家あり一人の弟子にいふ/n3-36l
明日は吉野の花見にゆかん先途程遠し
暁よりおきて出立を用意せよ心得たりと
夙におき酒飯ととのへ戸を拍けれは坊主
いまた夜ふか也とておきすさる程につね
つね弟子にかくしいねさまには焼味僧と
号して鶏(にはとり)の玉子をととのへ肴に用て酒
をのむ事を心に無心に思ひゐけるがその時
こらへかね夜かふかいかあさいかはしらぬやき
みそかててはもはや三番ないた/n3-37r