[[index.html|醒睡笑]] 巻3 文の品々
====== 10　文盲なる人弓懸を借りにやるとて・・・ ======

===== 校訂本文 =====

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文盲なる人、弓懸(ゆがけ)を借りにやるとて、紙を広げ手のひらに墨を付け、ひたと押し、腕くびの方に細き筋を回し書きて、「これをお貸しあれ」と言うて持たせつかはしたり。

見るにうなづき、「弓懸を貸せと言ふことの。返事せん」といふまま、皿と椀のなりを書きて戻しけり。

借りにやりたる仁(じん)、合点(がつてん)し、「さらはぬといふことの。是非(ぜひ)に及ばぬ」。

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===== 翻刻 =====

  一　文盲(もんもう)なる人ゆがけをかりにやるとて紙を
  　　ひろけ手のひらに墨(すみ)をつけひたとをし
  　　うてくびのかたにほそきすぢをまはし書
  　　てこれをおかしあれといふてもたせつかはし
  　　たり見るにうなづきゆかけをかせといふ
  　　事の返事せんといふまま皿(さら)と椀(わん)のなりを
  　　書てもとしけりかりにやりたる仁(じん)かつてん
  　　しさらはぬといふ事の是非(ぜひ)におよ／n3-35l

  　　はぬ／n3-36r