[[index.html|醒睡笑]] 巻2 吝太郎(しはたらう)
====== 18 濃州の岐阜に不動院とて真言宗の老僧あり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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濃州の岐阜に、不動院とて真言宗の老僧あり。正月の菓子に、国の名物なる枝柿三つすゑて出だし、その分にて、毎年時宜(じぎ)調へぬるを、おどけ者よく見知りて、あまりにしはきはたらきをよく見、例の菓子出でける時、「あら珍しや。賞翫(しやうぐわん)申さん」と、一つならず二つまで食ひけり。院主は苦々しきことに思はれ、「あの体(てい)ならば、みな食はれん。さらば愚僧も相伴(しやうばん)つかまつらう」と取りて食はれける、心の内ぞをかしき。
客退出のあとに、せめて元を引いたと((底本この一行、改行数字下げで小書き。))。
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===== 翻刻 =====
一 濃州の岐阜に不動院とて真言宗の/n2-45l
老僧あり正月の菓子に国の名物なる枝柿
三つすへて出し其分にて毎年時宜調ぬ
るをおとけ者よく見知てあまりにしはきは
たらきをよく見例の菓子出ける時あら
珍しや賞翫申さんと一つならす二つ迄くひ
けり院主は苦々敷事におもはれあのていな
らはみなくはれんさらば愚僧も相伴仕らふ
ととりてくはれける心の内そおかしき
客退出の跡にせめてもとをひいたと/n2-46r