[[index.html|醒睡笑]] 巻2 躻(うつけ) ====== 4 夜更け三更の終り奈良の都に火事出来す・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho2-035|<>]] 夜更け三更の終り、奈良の都に火事(ひごと)出来(しゆつたい)す。ある家主(いへぬし)、急ぎ二階にあがり、火元を問ふ。隣の者みな、「橋本の角(かど)より三間目よ」と言ふ。「それはわが姉のもとなり」と肝をつぶし、そのまま走ると思ひ、だうど落ちて腰を打ち折りたり。 日を経(へ)わづらふを、人見舞ひたれば、「かまへてこの後に、何と大切なる人の家が焼くるとも、二階からすぐにお走りあるな。落つるにすうだ」。 最明寺時頼禅門((北条時頼))   おそるべし用心もせで悔やむなよ火事(ひごと)盗人(ぬすびと)さては後の世 [[n_sesuisho2-035|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 夜ふけ三更のおはり奈良の都に火事出   来すある家主いそき二階にあかり火もとを/n2-23r   とふ隣の者みな橋本のかとより三間目   よといふそれは我か姉のもとなりと肝を   つぶしそのままはしるとおもひたうどおちて   腰をうちおりたり日を経わつらふを人見   まひたればかまへて此後になにとたいせつ   なる人の家かやくるとも二階からすくに   おはしりあるなおつるにすふた      最明寺時頼禅門    をそるへし用心もせてくやむなよ/n2-23l    火ことぬす人さてはのちの世/n2-24r