[[index.html|醒睡笑]] 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの
====== 18 町人のもの祝ひするあり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
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町人のもの祝ひするあり。大晦日(おほつごもり)に薪(たきぎ)を買ひ、庭なる棚に積ませけるが、何とやらん崩れさうなり。亭主、あやうきことに思ひ、下衆(げす)に向ひて、「もし五ヶ日の内に、あれなる薪が崩れば、『崩るる』と言ふな。『薪がめでたうなる』と言へ」と教へけるが、果たして元三の羹(かん)を祝ふ時、崩れかかれり。
下衆、「なう与二郎、薪がめでたうなるは」と呼ぶ。与二郎、走り来たり、「まかせておけ。与二郎がをらふ間は、何ともあれ、めでたうはなすまいぞ」と。
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===== 翻刻 =====
一 町人のものいはひするあり大晦日に薪(たきき)をかひ
庭なる棚につませけるがなにとやらんくづれ
さうなり亭主あやうき事に思ひ下主(けす)にむか
ひてもし五ヶ日の内にあれなる薪かくつれは
くつるるといふな薪かめてたふなるといへとをしへ
けるかはたして元三のかんをいはふ時崩(くつれ)かかれ/n1-75l
り下主なふ与二郎薪がめてたふなるはとよぶ
与二郎はしりきたりまかせてをけ与二らがを
らふ間はなにともあれめてたふはなすまいぞと/n1-76r