[[index.html|醒睡笑]] 巻1 謂へば謂はるる物の由来 ====== 24 へちまの皮とも思はぬとは・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-023|<>]] 「へちまの皮とも思はぬ」とは、紀の国の山家に、大辺路(おほへち)・小辺路(こへち)とて、峰高う岸けはしく、つづらおりなるつたひ道、人馬の往来たやすからぬ切所(せつしよ)あり。かのあたりに使ふ馬は、糠(ぬか)につけ藁(わら)につけ、大豆などは申すに及ばねば、まことに骨ばかりなるさまなり。 さるほどに、かしこの馬、皮を剥ぎても、背のあと瘡(かさ)の跡疵(あときず)のみにて、何の役にも立たぬものを、へち馬(ま)の皮とも思はぬことにいふならん。 [[n_sesuisho1-023|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 へちまの皮ともおもはぬとは紀の国の山家に   大へち小へちとて峯たかふ岸けはし   くつつらおりなるつたひ道人馬の往来   たやすからぬ切所(せつしよ)あり彼あたりにつかふ馬は   糠(ぬか)につけ藁(わら)につけ大豆なとは申にをよはねは   実に骨(ほね)斗なる様なりさるほとにかしこの馬   皮を剥てもせのあと瘡(かさ)の跡疵のみにて何   のやくにもたたぬ物をへち馬の皮ともお   もはぬ事にいふならん/n1-13l