[[index.html|醒睡笑]] 巻1 謂へば謂はるる物の由来 ====== 20 山城の国伏見のつづきに法性寺といふ在所あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-019|<>]] 山城の国伏見のつづきに法性寺(ほふしやうじ)といふ在所あり。 人、「ここをば何とて寺の名を呼ぶぞや」。老いたる男出で合ひ、「さること候ふ。昔、この地に庄屋あり。彼焼き米を好いて食ふ。終日噛みくたびれ、頬に含みながら寝入りたり。鼠、匂ひにたより食ひ破り、大きに口を開けけり。 その朝、地下の者どもとぶらひ来る中に、金瘡(きんさう)の上手あり。「風を引きては悪しかりなむ」と、まづ障子(しやうじ)を折りて疵(きず)の口に立てしより、「ほうしやうじ((頬障子・法性寺))」とはいふなり。 [[n_sesuisho1-019|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 山城の国伏見のつつきに法性(しやう)寺といふ在   所あり人此処をは何とて寺の名をよふ   そや老たる男出合さる事候昔此地に庄屋   有かれやき米をすいて食終日かみくたびれ   ほうにふくみなからねいりたり鼠(ねすみ)にほひにた   よりくひやふり大に口をあけけり其朝地/n1-11l   下の者ともとふらひくる中に金瘡(きんさう)の上手   あり風を引てはあしかりなむと先障子(しやうし)を折   て疵(きす)の口にたてしよりほうしやうしとはいふ也/n1-12r