[[index.html|醒睡笑]] 巻1 謂へば謂はるる物の由来 ====== 15 こぼれ幸ひとは何をいふ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== [[n_sesuisho1-014|<>]] 「こぼれ幸ひ」とは何をいふ。 昔、女子三人一つ枕に寝(い)ねたりし。姉、夢見るやう、「わが身の上へ富士の山がころびかかると見た」と語れば、人ありて合はせける、「それこそ富みたる男(をのこ)をもたんずる告夢(かうむ)なり」と祝ひければ、次の娘言ふ、「あれほど大きなる富士の山が姉ご一人の身の上ばかりへはころぶまじ。両方に寝(ね)たる者の上へも、かかりこそせめ」と嬉しげにてゐたりしが、はたして三人ながら、めでたく富貴の男を得たりし。これよりこの言葉はありとなむ。 [[n_sesuisho1-014|<>]] ===== 翻刻 ===== 一 こぼれさいはひとはなにをいふ昔女子三人   一つ枕にいねたりし姉夢見るやう我か身の   上へ冨士の山がころびかかると見たとかたれ   は人ありてあはせけるそれこそとみたる   おのこをもたんする告夢(かうむ)なりといはひけれは   次のむすめいふあれほと大なる冨士の山が   姉(あね)こひとりの身の上はかりへはころぶまし   両方にねたる者の上へもかかりこそせめとう/n1-10r   れしけにていたりしがはたして三人なから   目出度冨貴の男をえたりしこれより   このことははありとなむ/n1-10l