撰集抄 ====== 巻8第23話(98) 躬恒(歌) ====== ===== 校訂本文 ===== 昔、躬恒((凡河内躬恒))と聞こえし歌詠みの侍りける。 家に花のいみじう咲きたりけるに、大宮人むれ来て、花を興じて((「興じて」は底本「けこして」。諸本により訂正。))、日の山の端(は)にかたぶきぬるをなん歎き侍り。 「花七日を限り、その後は問ひ来る人も侍らじ」と思えて、   わがやどの花見がてらに来る人は散りなん後ぞ恋ひしかるべき と詠み侍るも、「げに」と思えて、あはれに侍り。 「山里は花こそやどのあるじなれ(([[m_senjusho08-20]]参照))」と詠みけん心地して侍り。 ===== 翻刻 ===== 昔躬恒と聞し哥読の侍りける家に花の いみしう咲たりけるに大宮人むれきて花をけこし/k251r て日の山の端にかたふきぬるをなん歎侍り花 七日をかきりその後はとひくる人も侍らしと覚て 我やとの花みかてらにくる人は ちりなん後そこひしかるへき と読侍るも実と覚てあはれに侍り山里は 花こそやとのあるしなれとよみけん心ちして侍り/k251l