無名抄 ====== 第67話 具親歌を不入心事 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 具親歌を不入心事 ** ((底本、ここに標題があるが、[[u_mumyosho066]]の続き。主語は寂蓮。))兄人(せうと)の具親少将(兵衛佐)の哥に心を入れぬをぞ憎み侍りし。 「なにゆゑ身を立てたる人なれば、しかあるらん。宿直(とのゐ)所をまれまれ立ち入りて見れば、晴の御会などのある比も、『弓よ、引目((底本「ひきへ」))よ』など取りこみて、細工、前に据ゑて、歌を大事とも思はぬ」。 口惜しき事にぞ言ひ侍りし。 ===== 翻刻 ===== 具親哥ヲ不入心事/e54r せうとの具親少将(兵衛佐)の哥に心をいれぬをそにくみ 侍しなにゆへみをたてたる人なれはしかあるらんとのゐ 所をまれまれたち入てみれははれの御会なとのある比 もゆみよひきへよなととりこみてさいくまへにすゑて 哥を大事ともおもはぬくちをしき事にそいひ侍し/e54l