蒙求和歌 ====== 第14第25話(225) 黄向訪主 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 黄向訪主 ** 後漢の黄向((底本ここのみ「廣向」。誤写とみて訂正。))、字は文章、清廉なせりし人なり。 昔、道行くに、金の珠𤧀((「𤧀」は「王(たまへん)+某」。底本には、「たまき」と読み仮名がある。))一嚢、落ちたるあり。その間に、百余に当りぬべし。 主(ぬし)の歎くらむことを、あはれびかへりみて、かたがた主を求めて、つひに尋ね会ひて、たしかに尋ね与へけり。 主のいはく、「落して後、まさにわが物にあらず。はじめてなんぢが((「なんぢが」は底本「な」に当たる文字が虫損。文脈により補う。))物を得るなり。しかれば、半分を取らむ」と言ひて、半分を黄向に与へて報ひけれども、固くいなびて、取らずして去りぬ。   散る花をもとの梢(こずゑ)に吹き返す((「吹き返す」は底本「スキカヘス」。文脈により訂正。))峰の嵐はあたならぬかな ===== 翻刻 ===== 黄向訪(ハウ)主  後漢ノ廣向字ハ文章清廉ナセリ/シ人也ムカシミチユクニ金ノ珠𤧀(タマキ) 一嚢(ロ)ヲチタルアリソノ間ニ百余ニアタリヌヘシヌシノナ ケクラムコトヲアハレヒカヘリミテカタカタヌシヲモトメテツ/d2-47r イニタツネアヒテタシカニタツネアタヘケリヌシノイハクヲト シテ後マサニワカモノニアラスハシメテ□ムチカモノヲウルナリシカレハ 半分ヲトラムトイヒテ半分ヲ黄向ニアタヘテムクヒケレトモ カタクイナヒテトラスシテサリヌ チル花ヲモトノコスヘニスキカヘス ミネノアラシハアタナラヌカナ/d2-47l