蒙求和歌 ====== 第11第16話(166) 庶女振風 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 庶女振風 ** 斉の庶女がをば、一人の女(むすめ)ありけり。この女、「母の財(たから)を取らむ」と思ふ心ありて、母を殺して、庶女に((底本「に」なし。書陵部本により補う。))、「かく」と言ひけり。 庶女、これを聞くより、あさましく、心憂く思へども、人にはえ言はずして、天に告げてけり。 時に雷電下りて、景公台を打ち傾(かたぶ)け、海水、多きに出でて、世、驚き、人、ことごとく騒ぎ惑ひけり。   天(あめ)とよみ風騒ぐなり世の中の人の心のうき雲の空 ===== 翻刻 ===== 庶(シヨ)女振(シム)風  斉ノ庶女カヲハヒトリノ女メアリケリ/コノ女メハハノタカラヲトラムト思フ心/d2-24l アリテハハヲコロシテ庶女カクトイヒケリ庶女コレヲキ クヨリアサマシク心ウク思ヘトモ人ニハエイハスシテ天ニツケテ ケリ時ニ雷電クタリテ景公台ヲウチカタフケ海水 ヲホキニイテテヨヲトロキ人コトコトクサハキマトヒケリ アメトヨミ風サハクナリヨノ中ノ 人ノココロノウキクモノソラ/d2-25r