蒙求和歌 ====== 第10第9話(139) 孔伋縕袍 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 孔伋縕袍((底本「孔伋温袍」。書陵部本、典拠により訂正。以下すべて同じ。)) ** 孔伋((子思))、家貧しくして、縕袍((褞袍とも書く。ドテラの意。))、表破れて裏なし。十旬に九度(たび)食ひけり。 田子方といふ人、狐白の裘((「狐白の裘」は底本「孤白の裘」。書陵部本、及び典拠により訂正。))を送れり。孔伋がいはく、「われ聞く、人に送る物をば、不肖の者、これを受く。溝(みぞ)((底本「ミチ」で淡墨でチをソと修正。諸本、及び文脈により訂正。))に捨つるがごとし。わが身は徳無しといへども、あへて身をば溝と思はず」と言ひて使に返してけり。 十旬は十日なり。明王は咫尺の玉を受けずして、一寸の旬を受く。旬はなほ時のごとし。   空さゆる雲のころもを天つ風心強くも吹きかへしける ===== 翻刻 ===== 孔伋(キウ)温(ヲム)袍(ハウ)  〃〃イヱマツシクシテ温袍ヲモテヤレテ/ウラナシ十旬ニ九タヒ食ヒケリ田(テン)子(シ)方(ハウ)ト云 人孤白ノ裘ヲヲクレリ孔伋カ云ワレキク人ニヲクルモノヲハ不 肖ノ者コレヲウクミチニスツルカコトシワカミハ雖トモ無シト徳アヘテ ミヲハ溝トヲモハスト云テツカヒニカヘシテケリ 十旬ハ十日ナリ明王ハ不受咫尺之玉(ヲ)而受一寸之旬ヲ〃ハ猶時コトシ ソラサユルクモノコロモヲアマツ風 心ツヨクモフキカヘシケル/d2-14l