蒙求和歌 ====== 第10第4話(134) 陸玩無人 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 陸玩無人((底本「陸阮」。典拠により訂正。以下すべて同じ)) ** 陸玩は徳望人に過ぎたりけれども、身を数ならず思ひなして((「思ひなし」は底本「ヲモヒテシ」で「テ」に「ヒ歟」と傍書。いずれも意味が通らないため、書陵部本により訂正。))過ぐしけり。 時に王導((底本「王道」。書陵部本及び典拠により訂正))・郗鑑・庾亮、うち続き失せにけるを、世の中おほきに惜しみけり。おほやけ、陸玩を召して、司空になされにけり。 陸阮、のがれ申せども、かなはず。人来つ問ひければ、「われ、その器物(うつはもの)に足らずして、すでに三公に列なれり。天下に人無きに似たり」と言へり。 聞く人、「なほ、陸玩ばかりの人なし」とぞ讃めける。   身の上をなきになすこそかへりてはなほ雲高き心なりけれ ===== 翻刻 ===== 陸阮無人  陸阮ハ徳望人ニスキタリケレトモミヲカス/ナラスヲモヒテ(ヒ歟)シテスクシケリ時ニ王/d2-13r 道郗鑒(カン)庾亮ウチツツキウセニケルヲヨノ中ヲホキニヲ シミケリヲホヤケ陸阮ヲメシテ司空ニナサレニケリ陸阮ノ カレ申セトモカナハス人キツトヒケレハワレソノウツハモノニタラス シテステニ三公ニツラナレリ天下ニ人ナキニニタリト云ヘリキク 人ナヲ陸阮ハカリノ人ナシトソホメケル ミノウエヲナキニナスコソカヘリテハナヲクモタカキ心ナリケレ/d2-13l