蒙求和歌 ====== 第9第8話(128) 季札掛剣 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 季札掛剣 ** 呉の季札、おほやけの御使ひとして、隣の国に行きけるに、徐君が、季札が剣を見て、心かけてけり。季札。その心を悟りて、「帰りて与へむ」と思ひて、行きぬ。 帰り来たりて、徐君を尋ぬるに、「早く、死ににけり」と言ふ。季札、徐君が塚に行きて、剣をとりて、柏樹の枝にかけて去りぬ。 亡きあとまでも、思ふ筋をたがふべからざりけるなり。((底本、和歌なし。)) ===== 翻刻 ===== 季札掛釼  呉ノ季札ヲホヤケノ御使トシテ/隣リノ国ニユキケルニ徐君カ季札カ 釼ヲミテ心カケテケリ季札ソノ心ヲサトリテカヘリテ アタヘムト思ヒテユキヌカヘリキタリテ徐君ヲ尋ヌルニハヤク シニニケリト云季札徐君カツカニユキテ釼ヲトリテ栢 樹ノ枝ニカケテサリヌナキアトマテモ思フスチヲタカフヘカ                      ラサリケルナリ/d2-10r