蒙求和歌 ====== 第7第5話(105) 管仲随馬 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 管仲随馬 ** 管仲((管夷吾))は斉の桓公に仕へて、上卿たりき。 桓公、孤竹といふ所を行く時、おほきに雪降りて、道に惑ひにけり。時に、管仲がいはく、「老馬智を用ゐるべし」と言へり。ここに、老馬を放ちて、その跡を行くに、馬、もと来(こ)し道を忘れねば、つひにしるしとなりにけり。 管仲、公子糾が将として、戦ひに赴きて、桓公を追ひ責むるに、あやふく見えけるを、帯の上を射て、いつはり助けてけり。桓公、後に管仲を迎へて、政(まつりごと)を任せり。   迷はまし((「迷はまし」は底本「フヨハマシ」。書陵部本(桂宮本)により訂正。))雪に家路を行く駒のしるべを知れる人なかりせば ===== 翻刻 ===== 管仲随馬 管仲ハ斉ノ桓公ニツカヘテ上卿タリキ桓公孤竹ト云トコロ ヲユクトキヲヲキニ雪フリテミチニマトヒニケリ時ニ管仲カ云ク 老馬智ヲモチヰルヘシト云リココニ老馬ヲハナチテソノアトヲユ クニ馬モトコシミチヲワスレネハツイニシルシトナリニケリ 管仲公子糺カ将トシテタタカヒニヲモムキテ桓公ヲヲヒセム ルニアヤウクミエケルヲ帯ノウエヲイテイツハリタスケテケリ 桓公ノチニ管仲ヲムカエテマツリコトヲマカセリ フヨハマシ雪ニイヘチヲユクコマノシルヘヲシレル人ナカリセハ/d1-51l