蒙求和歌 ====== 第6第7話(97) 王濬懸刀 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 王濬懸刀 ** 王濬、字(あざな)は士治と言へり。夢に三つの((「三つ」は底本「四ノ」。諸本により訂正。))刀を、臥したる家の、梁の上にかけたり。やがて((「やがて」は底本「や」虫損。諸本により補う。))、また一つ刀益すと見て、心に「悪しき夢」と恐れ驚きけり。 時に主簿李牧((『晋書』等によると、李毅。底本、「牧」に「毅イ」と注記あり。))、合はせていはく、「三刀を州の字とす。一刀を益すをば、益州とす。なんぢ、益州の刺史にぞならむずらむ」と合はせてけり。後に、益州刺史となりにけり。 >或説云、王濬、字士治。主簿、字毅とも云り   風((風は底本「カハセ」。衍字とみて「ハ」を削除。))吹けばかたなびきける竹のよをわけてぞ見つる夢のあけぼの((底本、歌に続けて、「国掌分竹枝云」とある。)) ===== 翻刻 ===== 王濬懸刀 王濬(シユム)アサナハ士治ト云リユメニ四ノ刀ヲフシタル家ノ梁ノウエ ニカケタリ□カテ又一刀益トミテ心ニアシキユメトヲソレヲ トロキケリ時ニ主簿李(リ)牧(ホク 毅イ)アハセテ云ク三刀ヲ州ノ字トス 一刀ヲマスヲハ益州トス汝チ益州ノ刺史ニソナラムスラムト アハセテケリ後ニ益州刺史トナリニケリ 或説云王濬字 士治主簿字毅トモ云リ カハセ吹ハカタナヒキケルタケノヨヲワケテソミツル夢ノアケホノ 国掌分竹枝云/d1-48r