蒙求和歌 ====== 第3第6話(41) 楊修捷対 薄 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 楊修捷対 薄 ** 楊修、魏王曹操が主簿たりき。江南に至りて、曹娥碑の文を見るに八字あり。「黄絹幼婦外孫韲臼」と書けり。 曹操、これを悟り得ず。楊修、「知れり」と言ふを、「しばし」と言ひて、案じて、三十里にして悟り得たり。 先づ楊修に解かしむるに、楊修がいはく、「黄絹は色の糸なり。色糸は絶字なり。幼婦は少女なり。少女は妙の字なり。外孫は女子なり。女子は好字なり。韲臼は受辛なり。受辛は辤字((「辤」は「辞」の異体字。))なり。四字につづめて『絶妙好辞』と言へり」。 曹操、これを聞きて、「わが悟れるごとし」と讃めけり。   見るからにしるくやはあらぬ糸薄(いとすすき)ほど経て誰か思ひ解きける ===== 翻刻 ===== 楊修捷対 薄 楊修魏王曹操カ主簿タリキ江南ニ至テ曹娥碑(ヒ)ノ文ヲ/d1-23l ミルニ八字アリ黄絹幼婦外孫韲(セイ)臼(キウト)カケリ曹操此ヲ サトリエス楊修シレリト云ヲシハシト云テアムシテ卅里ニシテ サトリエタリマツ楊修ニトカシムルニ楊修カ云ク黄絹ハ色ノ 糸ナリ色糸ハ絶字ナリ幼婦ハ少女ナリ少女ハ妙ノ 字ナリ外孫ハ女子ナリ女子ハ好字ナリ韲臼ハ受 辛ナリ受辛ハ辤字ナリ四字ニツツメテ絶ノ妙好辤 トイヘリ曹操コレヲキキテワカサトレルコトシトホメケリ ミルカラニシルクヤハアラヌイトススキホトヘテタレカ思トキケル/d1-24r