蒙求和歌 ====== 第2第7話(27) 常林帯経 早苗 ====== ===== 校訂本文 ===== ** 常林帯経 早苗 ** 常林、若くして書生たりき。 漢の末に、世、大きに乱れて、人、安きことなかりけり。時に常林、田野にこもりて、文((底本「父(文歟)」とある。文脈から「文」を採用する。なお、書陵部本(桂宮本)は「書」。書陵部本は「父」。))を身にそへて、田を作りけり。その妻、乾飯(かれひ)を持ちて行きて、敬ふこと、あるじのごとくにしけり。 後に、位、太常博士に至りにけり。年八十三にて失せにけり。   沈みてもふみ見る道を嬉しやと山田の早苗思ひ取りけむ ===== 翻刻 ===== 常林帯経 早苗 常林若クシテ書生タリキ漢ノ末ニ世ヲホキニ乱テ人ト安キ 事无リケリ時ニ常林田野ニコモリテ父(文歟)ヲ身ニソヘテ田ヲツク/d1-17l リケリ其妻カレヰヲモチテユキテウヤマウコトアルシノ コトクニシケリ後ニ位ヒ大常博士ニ至リニケリ年八十三ニテ ウセニケリ シツミテモフミミル道ヲウレシヤト山田ノ早苗ヘ思ヒトリケム/d1-18r