十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事 ====== 10の42 河内重如をば山次郎判官と号す其の品いやしきものなり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 河内重如((山口重如(『後拾遺集』)・田口重如(『金葉集』)))をば山次郎判官と号す。其の品、いやしきものなり。 われより高き女を思ひかけて、懸想文(けさうぶみ)を書きて、手づから持て行きけり。   人づては散りもやすると思ふまにわれが使にわれか来つるぞ 女、めでてしたがひにけり。 この人、河内より、夜ごとに住江に行きて、夜を明かしけり。いみじき数寄者にてぞありける。 死ぬとても、歌を読みたりけり。   たゆみなく心をかくる弥陀仏人やりならぬ誓ひたがふな ===== 翻刻 ===== 四十五河内重如ヲハ山次郎判官ト号ス、其ノ品イヤシキモノナリ、/k80 我ヨリ高キ女ヲ思カケテ、ケサウフミヲ書テ、手ツカ ラモテイキケリ、 人ツテハチリモヤスルト思フマニ、ワレカツカヒニワレカキツルソ、 女メテテ随ニケリ、コノ人河内ヨリ夜毎ニ住江ニユキテ夜 ヲアカシケリ、イミシキスキモノニテソ有ケル、シヌトテモ 哥ヲ読タリケリ、 タユミナク心ヲカクル弥陀仏、ヒトヤリナラヌチカヒタカフナ、/k81