十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事 ====== 10の38 白楽天ある年春暮烟霞の興にひかれてあくがれ出でたりけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 白楽天((白居易))、ある年、春暮烟霞の興にひかれて、あくがれ出でたりけるに、花おもしろき家のありけるに、乗りながら入りたりけるを、あるじの将軍とがめければ、   遥見人家花便入   不論貴賤与親踈 と詠じけるによりて、また言ふことなかりけり。 ものを感ずる風情、かくのごとし。 ===== 翻刻 ===== 白楽天アル年春暮烟霞ノ興ニヒカレテ、アクカレ出タ リケルニ、花オモシロキ家ノ有ケルニ、乗ナカラ入タリ ケルヲ、アルシノ将軍トカメケレハ、 遥見人家花便入、不論貴賤与親踈ト詠シケルニヨ リテ、又云事ナカリケリ、物ヲ感スル風情如此、/k77