十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事 ====== 10の13 和泉式部が男のかれがれなりけるころ貴船に詣でたりけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 和泉式部が男の、かれがれなりけるころ、貴船に詣でたりけるに、蛍の飛ぶを見て、   もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る とながめければ、社の内より、忍びたる御声にて、かく聞こえけり。   奥山のたぎりて落る滝つ瀬の玉散るばかりものな思ひそ そのしるしありけるとぞ。 ===== 翻刻 ===== 十二和泉式部カ男ノカレカレナリケル比、貴舟ニ詣タリケルニ、 ホタルノトフヲミテ、 物思ヘハ沢ノホタルモ我身ヨリ、アクカレ出ル玉カトソミル トナカメケレハ、社ノ内ヨリ忍ヒタル御声ニテ、カク聞エケリ、 オク山ノタキリテ落ルタキツセノ、タマチルハカリ物ナオモヒソ、 ソノシルシアリケルトソ、/k49