十訓抄 第六 忠直を存ずべき事 ====== 6の37 恵心僧都金峰山に正しき巫女ありと聞き給ひて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 恵心僧都((源信))、「金峰山に正しき巫女あり」と聞き給ひて、ただ一人行き向ひ給ひて、「心中の所願、占へ」とありければ、歌占に、   十万億の 国々は   海山隔てて 遠けれど   心のみちの なほければ   つとめていたる とこそきけ と、打ち出だしたりければ、涕泣して、返り給ひぬ。 ===== 翻刻 ===== 卅九恵心僧都金峰山ニ正シキ巫女有ト聞給テ、只一人 行向ヒ給テ、心中ノ所願占ヘトアリケレハ、哥占ニ十 万億ノ国々ハ海山ヘタテテ遠ケレト、心ノミチノナヲ/k100 ケレハ、勤テイタルトコソキケト、打出シタリケレハ、涕泣シ テ返リ給ヌ、/k101