十訓抄 第六 忠直を存ずべき事 ====== 6の12 後朱雀天皇御悩大事にならせおはしまして位を東宮に譲り奉り・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 後朱雀天皇、御悩大事にならせおはしまして、位を東宮((親仁親王・後冷泉天皇))に譲り奉り、後三条院((尊仁親王・後三条天皇))を東宮に立て奉り給ふに、宇治殿((藤原頼通))を召して、二所の御事を仰せおかせ給ひけるに、御門の御事をば、畏まり申させ給て、東宮の御事を仰せられける時は、御返事申させ給はず、不受の色におはしけり。 この宮の御事、おろかなるべきにはあらねども、心を二君に分つべからざるよしなり。 ===== 翻刻 ===== 十五後朱雀天皇御脳大事ニナラセオハシマシテ、位ヲ東 宮ニ譲タテマツリ、後三条院ヲ東宮ニ立奉給ニ宇 治殿ヲ召テ、二所ノ御事ヲ仰置セ給ケルニ、御門 ノ御事ヲハ畏申サセ給テ、東宮ノ御事ヲ被仰 ケル時ハ御返事申サセ給ハス、不受ノ色ニオハシケ リ、此宮ノ御事ヲロカナルヘキニハアラネトモ、心ヲ二 君ニワカツヘカラサル由也、/k49