十訓抄 第五 朋友を撰ぶべき事 ====== 5の11 三条院皇女前斎宮も道雅三位にあひ給ひて・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 三条院皇女((当子内親王))前斎宮も、道雅三位((藤原道雅))にあひ給ひて、世の人、知るほどになりにければ、御髪(みぐし)おろし給ひにけり。 三位、帥内大臣((藤原伊周))の御子なれば、致光((平致光。[[s_jikkinsho05-10|前話]]参照。))には似るべきにあらねども、すべてあるまじき御振舞なり。 三位の御消息だに奉らぬほどに、関守きびしくなりにければ、あまた歌詠みける中に、   あふさかは東路(あづまぢ)とこそ聞きしかど心つくしの名にこそありけれ   今はただ思ひ絶えなんとばかりを人づてならでいふよしもがな ===== 翻刻 ===== 十一三条院皇女前斎宮も道雅三位にあひ給て、 世の人知程に成にけれは御くしおろし給にけり、/k16 三位帥内大臣の御子なれは致光には似へきにあ らねとも、すへて有ましき御振舞也三位の御 消息たに奉らぬ程に関守きひしく成にけ れはあまた哥読ける中に、 あふさかはあつまちとこそききしかと、心つくしの 名にこそ有けれ、 いまはたた思ひたえなんとはかりを人つてなら ていふよしもかな、/k17