十訓抄 第五 朋友を撰ぶべき事 ====== 5の3 後三条院東宮にておはしましける時学士実政朝臣任国に赴きけるに・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 後三条院、東宮にておはしましける時、学士実政朝臣((藤原実政))、任国に赴きけるに、餞別の名残、惜しませ給ひて、   州民縦作甘棠詠   莫忘多年風月遊 この意は、毛詩にいはく、「孔子曰、甘棠莫伐、召伯之所宿也」といへることなり。 また御歌、   忘れずは同じ空とも月を見よほどは雲居にめぐりあふまで 君なれども、臣なれども、互ひに志の深く、隔つる思ひのなきは、朋友に等しといへり。 ===== 翻刻 ===== 三後三条院東宮ニテオハシマシケル時、学士実政朝 臣任国ニ赴ケルニ、餞別ノ名残惜セ給テ、 州民縦作甘棠詠、莫忘多年風月遊、 此意ハ毛詩ニ云、孔子曰、甘棠莫伐邵伯之所 宿也ト云ヘル事ナリ、亦御哥 ワスレスハ同シ空トモ月ヲミヨホトハ雲井ニメ クリアフマテ 君ナレトモ臣ナレトモ互ニ志ノ深ク、隔ル思ノナキハ/k6 朋友ニヒトシト云リ、/k7