十訓抄 第三 人倫を侮らざる事 ====== 3の13 村上天皇ひそかにいやしき官人の年老いたるを召して・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 村上天皇、ひそかにいやしき官人(つかさびと)の年老いたるを召して、延喜の先朝と、当世と、いかなる変りめかある」と問はせ給ひければ、おそれ思えけるにや、「さらに変ること侍らず」と、いみじくかしこまりたりければ、「おぼしめす旨(むね)ありて御尋ねあるなり。あらむほどのこと、たしかに申すべき」由、しきりに仰せ下されければ、その時、「なにごともめでたし。さらにけぢめ思ひわかず侍るに、当世は除目行はるるに、続松(ついまつ)のいささか入りまさるやうにぞ思え侍る」と申したりければ、いみじく御感ありけり。 さて、司召(つかさめし)のことをば、かねてよりおぼしめしさだめられけり。 ===== 翻刻 ===== 邑上天皇ヒソカニイヤシキツカサ人ノ年老ヲ召テ、延 喜ノ先朝ト当世トイカナル替メカアル」ト問セ給ケレ ハ、恐覚エケルニヤ、更ニカハル事侍ラストイミシク畏タ リケレハ思食ムネアリテ御尋アル也、アラム程ノ事 慥ニ申ヘキ由頻ニ仰下サレケレハ、其時何事モ目出 シ、更ニケチメ思ワカス侍ニ、当世ハ除目行ハルルニ続 松ノイササカ入マサル様ニソ覚侍ト申タリケレハ、イ/k130 ミシク御感有ケリ、サテツカサメシノ事ヲハ、兼テヨリ 思食サタメラレケリ、/k131