十訓抄 第一 人に恵を施すべき事 ====== 1の50 近江守藤原知章朝臣は宇治殿の家司なりけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 近江守藤原知章朝臣は宇治殿の家司なりけり。 臨時祭の日、戸の下に居て、事を行ひけるに、頼光((源頼光))来たりて、その所に居たりけるを、追立ててけり。「戸の下に二人居る例、いまだ聞かず。無礼なり」となん言ひけり。 これ、頼光か失礼、またさし過ぎたる振舞ひにや。傍輩に追ひ立てらるること、面目なかるべし。 ===== 翻刻 ===== 近江守藤原知章朝臣ハ宇治殿家司也ケリ、臨時祭 日、戸下ニヰテ事ヲ行ヒケルニ頼光来テ其所ニ居/k92 タリケルヲ追立テケリ、戸下ニ二人居ル例未聞無 礼也トナン云ケリ、是頼光カ失礼又サシスキタル振舞 ニヤ、傍輩ニ追立ラルル事面目ナカルヘシ、/k93