[[index.html|伊勢物語]]
====== 第14段 昔男みちの国にすずろに行き至りにけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
[[sag_ise013|<>]]
昔、男、みちの国にすずろに行き至りにけり。そこなる女、京の人はめづらかにや覚えけむ、切(せち)に思へる心なんありける。
さて、かの女、
なかなかに恋に死なずは桑子(くわこ)にぞなるべかりける玉の緒(を)ばかり
歌さへぞ鄙(ひな)びたりける。
さすがに「あはれ」とや思ひけん、行(い)きて寝にけり。夜ふかく出でにければ、女、
夜も明けばきつにはめなでくたかけのまたきに鳴きてせなをやりつる
と言へるに、男、「京へなむまかる」とて、
栗原のあねはの松の((「あねはの松の」は底本「あれはの松の」。諸本により訂正。))人ならば都のつとにいざと言はましを
と言へりければ、よろこぼひて、「思ひけらし」とぞ言ひをりける。
[[sag_ise013|<>]]
===== 挿絵 =====
{{:text:ise:isepic14.jpg}}
===== 翻刻 =====
むかし男みちのくににすすろに行
いたりにけりそこなる女京の人はめつら
かにやおほえけむせちにおもへる心
なんありけるさてかのをんな
中々に恋にしなすは桑子にそ
なるへかりける玉のをはかり
うたさへそひなひたりけるさすかにあ
はれとやおもひけんいきてねにけり夜ふ/s25l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/25?ln=ja
かくいてにけれは女
夜も明はきつにはめなてくたかけの
またきになきてせなをやりつる
といへるにおとこ京へなむまかるとて
くりはらのあれはの松の人ならは
宮このつとにいさといはましを
といへりけれはよろこほひて思ひけらし
とそいひをりける/s26r
【絵】/s26l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/26?ln=ja