平中物語 ====== 第20段 またこの男院の御門召して御前に菊を植ゑさせ給はむ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== また、この男、院の御門((宇多法皇))、召して、「御前に菊を植ゑさせ給はむ。おもしろき菊奉れ」と仰せ事承りてまかづるに、また召し返して、「その奉らむには、言付け奉らずは、納め給はじ」とありければ、かしこまりて、まかでて、かくなん、   秋をおきて時こそありけれ菊の花うつろふからに色のまされば とて、奉りける。 ===== 翻刻 ===== けるくちをしくしらせてやみにけり又/26オ このおとこ院のみかとめして御前にき くをうゑさせたまはんおもしろききく たてまつれとおほせ事うけたまはりて まかつるに又めしかへしてそのたてまつらむ にはことつけたてまつらすはおさめたまは しとありけれはかしこまりてまか ててかくなん あきをおきてときこそありけ れきくのはなうつろふからに色のまされは とてたてまつりけるこのおなしおとこ/26ウ