[[index.html|古今著聞集]] 魚虫禽獣第三十
====== 723 楚の襄王晋国を討たむとす・・・ ======
===== 校訂本文 =====
楚の襄王((荘王の誤り。『説苑』では呉王。))、晋国を討たむとす。孫叔敖((「敖」は底本「教」。諸本により訂正。))これをいさめ申していはく、「園(その)の楡(にれ)の木の上に、蝉の露を飲まんとするあり。後ろに蟷螂の犯さむとするを知らず。蟷螂、また蝉をのみまもりて、後ろに黄雀の犯さむとするを知らずい。黄雀、また蟷螂をのみまもりて、楡の木のもとに弓を引く童子の犯さむとするを知らず。童子、また黄色雀をのみまもりて、前に深谷、後ろに堀株のあることを知らずして、身をあやまてり。これ前利をのみ思ひて、後害をかへりみぬゆゑなり」と申せり。
王、この時悟りを開きて、晋を攻めむといふこと思ひとどまりにけり。
===== 翻刻 =====
楚襄王晋国をうたむとす孫叔教これをいさめ
申ていはくそのの楡の木のうへに蝉の露をのまん
とするありうしろに蟷螂のをかさむとするを
しらす蟷螂又蝉をのみまもりてうしろに黄雀
のをかさむとするをしらす黄雀又蟷螂をのみ
まもりてにれの木のもとに弓を引く童子のをか
さむとするをしらす童子又黄色雀をのみまも/s563l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/563
りて前に深谷うしろに堀株のあることをしら
すして身をあやまてりこれ前利をのみおもひ
て後害をかへりみぬゆへなりと申せり王此時さと
りをひらきて晋をせめむといふことおもひとと
まりにけり/s564r
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/564