[[index.html|古今著聞集]] 草木第二十九 ====== 653 宇治殿四条大納言と春秋の花いづれかすぐれたると論ぜさせ給ひけり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 宇治殿((藤原頼通))、四条大納言(公任卿)((藤原公任))と、「春秋の花、いづれかすぐれたる」と論ぜさせ給ひけり。「春は桜をもて第一とす。秋は菊をもて第一とす」と、宇治殿仰せられければ、大納言、「梅の候はむ上は、桜第一にてはいかが候ふべき」と申されければ、梅と桜との論になりて、自余の花の沙汰は次になりにけり。 大納言、恐れをなして、強く論じ申されずながら、「なほ、春の曙に紅梅の艶色捨てられがたし」と申されける、優(いう)にぞ侍りける。江記((『江談抄』を指すが現行本にはない。))に見えたり。 ===== 翻刻 ===== 宇治殿四条大納言(公任卿)と春秋の花いつれかすく れたると論せさせ給けり春はさくらをもて第一 とす秋は菊をもて第一とすと宇治殿おほせられ/s515r けれは大納言梅の候はむうへは桜第一にてはいかか 候へきと申されけれは梅と桜との論になりて自餘 の花のさたはつきになりにけり大納言をそれを なしてつよく論し申されすなから猶春の曙に 紅梅の艶色すてられかたしと申されける優にそ 侍ける江記に見えたり/s515l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/515