[[index.html|古今著聞集]] 興言利口第二十五 ====== 543 持明院になつめ堂といふ堂あり・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== 持明院に、なつめ堂といふ堂あり。淡路入道長蓮((源盛長))が堂なり。築地の崩れたりけるを築(つ)かせけるに、築く者ども、おのが同士(どち)物語すとて、聖覚法印の説経のことなどを語りけり。 その折しも、聖覚輿にかかれて、その前を通りけるに、これらが物語に「聖覚の」と言ふを、供なる力者法師聞きとがめて、「おやまきの聖覚や、ははまきの聖覚や」など、ねめつつ見返り見返り憎みけり。 築地築きを呪(の)るにてはあれども、当座には主(しゆう)を呪る((「呪る」は底本「のか」。諸本により訂正。))とぞ聞こえける。 「かかる不祥こそありしか」と、かの法印、人に語りて笑ひけり。 ===== 翻刻 ===== 持明院になつめたうといふ堂あり淡路入道長蓮/s429l http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/429 か堂也築地のくつれたりけるをつかせけるにつくもの ともをのかとち物語すとて聖覚法印の説経の 事なとをかたりけり其折しも聖覚輿にかかれて 其前をとをりけるにこれらか物語に聖覚のといふ をともなる力者法師ききとかめておやまきの聖覚 やははまきの聖覚やなとねめつつ見かへり見かへりにくみ けり築地つきをのるにてはあれとも当座には しうをのかとそ聞えけるかかる不祥こそありしかと 彼法印人にかたりてわらひけり/s430r http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/430