[[index.html|古今著聞集]] 興言利口第二十五
====== 528 同じ院の侍の長に兵庫助則定といふ者ありけり・・・ ======
===== 校訂本文 =====
同じ院((高倉天皇皇女範子内親王。[[s_chomonju527|527]]参照))の侍の長に、兵庫助則定といふ者ありけり。むげに年若き者にて侍りけるが、侍の雑仕に小松とて六十ばかりなる老女を最愛しけり。
傍輩(はうばい)ども笑ひて、「小松まき、小松まき」と言ひけるほどに、ある台盤所にて、女房さぶらひを召して、「こまつなぎ、きつときつと参らせよ」と仰せられけるを、この小侍、ものさはがしう聞きて、「『小松まき、きつと参れ』と仰せらるるぞ」と心得て、思ひもかけぬ兵庫助を召して参りたりければ、「こは何事ぞ」と仰せければ、「さも候はず。『小松まき、きと参らせよ』と仰せ候へば、召して参りて候ふぞかし」と申しける、をかしかりけることかな。
===== 翻刻 =====
同院の侍長に兵庫助則定といふ物ありけりむけに
としわかきものにて侍けるか侍の雑仕に小松とて六十
斗なる老女を最愛しけり傍輩ともわらひて小松
まき小松まきといひける程にある台盤所にて女房さふらひ/s420r
をめしてこまつなき急度急度まいらせよと仰られける
を此小侍物さはかしう聞て小松まき急度まいれと
仰らるるそと心えて思もかけぬ兵庫助をめして
まいりたりけれはこは何事そと仰けれはさも候はす
小松まききとまいらせよと仰候へはめしてまいりて候
そかしと申けるをかしかりける事かな/s420l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/420