[[index.html|古今著聞集]] 闘諍第二十四
====== 506 天福元年祇園の十列に院の左将曹秦久清母の服にて出仕せざりけるが・・・ ======
===== 校訂本文 =====
天福元年、祇園の十列(とれつ)に院の左将曹秦久清、母の服にて出仕せざりけるが、忍びて車に乗りて路次(ろし)をうかがひ見けるに、大殿((藤原教実))の雑色の長府生秦兼友、同じく車に乗りて見けるほどに、はからざるに久清に散々にかけられたりけるよし、うれへ申しければ、久清を召して御尋ねありければ、久清、申しけるは、「思ひがけぬ物に乗り候ひて、かかる不思議を引き出だして候ふ。いかやうにも御勘当候ふべし」と申したりければ、「思ひがけぬ物に乗りて」の申しやう、興ありて、沙汰なくなりにけり。
まことに随身の乗物に車、思ひがけぬものなり。
===== 翻刻 =====
天福元年祇園十列に院左将曹秦久清母の
服にて出仕せさりけるかしのひて車にのりて路
次をうかかひ見けるに大殿雑色長府生秦兼
友おなしく車にのりて見ける程にはからさるに
久清に散々にかけられたりけるよしうれへ申けれは/s406r
久清をめして御尋ありけれは久清申けるはおもひ
かけぬ物にのり候てかかる不思議を引出して
候いかやうにも御勘当候へしと申たりけれは思
かけぬ物にのりての申やう興ありて沙汰なく
なりにけりまことに随身の乗物に車おもひかけ
ぬものなり/s406l
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