[[index.html|古今著聞集]] 哀傷第二十一
====== 467 承久の乱れによりて中御門中納言宗行卿関東へ呼び下されけるに・・・ ======
===== 校訂本文 =====
承久の乱れによりて、中御門中納言宗行卿((藤原宗行・葉室宗行))、関東へ呼び下されけるに、菊川といふ所にて失なはるべきよし聞きて、遊女が家の柱に書き付け侍りける、
昔南陽県菊水 昔は南陽県の菊水
汲下流而延齢 下流を汲みて齢(よはひ)を延ぶ
今東海道菊河 今は東海道の菊河
於西岸而失命 西岸に於いて命を失ふ
今日過ぐる身をうき島が原にきてつひの命をまた定めつる((「また定めつる」は底本「きた定つる」。諸本により訂正。))
さしもの中に、取りあへず案じつらねられける、あはれにいみじきことなり。
それ書き付けたりける柱をば、たびたびの焼亡(ぜうまう)に((「焼亡に」は底本「焼ニ」。諸本により「亡」を補う。))これを大事に取り出だしけるが、近くありける火に焼けにけり。
===== 翻刻 =====
承久のみたれによりて中御門中納言宗行卿関東へよひ/s365r
下されけるに菊河といふ所にてうしなはるへきよしききて
遊女か家のはしらにかきつけ侍ける
昔南陽県菊水汲下流而延齢
今東海道菊河於西岸而失命
けふ過る身をうき嶋か原にきてつゐの命をきた定つる
さしもの中に取あへす案しつらねられけるあはれ
にいみしき事也それ書付たりける柱をはたひ
たひの焼ニこれを大事に取出しけるかちかくあり
ける火にやけにけり/s365l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/365